蓬田先生のバラのコラム

わかさ生活にて「バラの香りの講演会」を開催

2009年11月28日、わかさ生活にて、バラの香りの講演会を行いました。

講演の内容は、(1)嗅覚について(2)バラの香り成分(3)アロマコロジーの3本立てでしたが、脱線が多く(いつもの事ですが)やや散漫になってしまい、反省しています。

2時間ほどでしたが、熱心に耳を傾けていただき感謝しております。終了後もバラ好きの方達と、話が尽きず楽しくも勉強になる情報もいただきました。以下、配布したレジュメを掲載することにします。



講演レジュメ

2009年11月28日

『植物の香りと健康』−バラ−
植物の香りには嗅覚に訴えて、心と体の両面から癒す効用があります。
ヒトの五感のひとつの嗅覚の研究は、実験の条件設定や、被験者の確かな生理・心理データを取りだす方法が難しく、視覚や聴覚研究などに遅れをとってきました。

2004年、嗅覚の受容体(においの仕組み)に関する研究に対して、ノーベル生理学・医学賞が与えられました。人間は約350種類の受容体をもち、1万種類ものにおいを嗅ぎ分ける能力があると報告されています。さらに、香り情報が大脳へ伝達されると、感情や記憶などの複雑な機能に結びつくと解説され、より詳細な解析が今後の研究に期待されています。

薔薇の花弁内で生合成された香気成分は、単に香りが良いだけでなく、ヒトの生理・心理作用に良い影響があることがわかってきました。すなわち、心の鎮静・覚醒効果をはじめ、ストレスの低減、免疫力の向上、記憶の固定化への影響、スキンケア効果(皮膚バリア、機能回復力アップ)などが科学的に実証されつつあります。これらはヒトが本来もっているホメオスタシスを正常に作用させることに繋がっています。ホメオスタシスとは、人間を含めた生物にとって、とても大事な「心と体の健康維持システム」のことです。生体は気温・湿度などの外的環境変化や、多様な内的ストレスなどの変動要因にさらされています。しかし、自己の心理作用や生理機能が反作用をして、変動をうち消し、元の状態にもどすわけです。この機能は、自律神経系、免疫系、内分泌系と密接に結びついており、薔薇の香りはこれらの維持・回復に深く関わっているのです。

西洋医学的な考え方である、対処療法としての医薬品の服用・塗布行為などは、時として副作用をともなうことがあります。しかし、芳香植物の香りを嗅ぐ行為は、副作用なしで自らの治癒力をよりパワーアップさせることに繋がっていると考えてもよいでしょう。これらの研究を、アロマコロジー(芳香:aroma + 心理学:psychology)と呼びます。

今後も嗅ぐことによる、香りの効用研究やその情報は、注視すべきです。自然界および開発されてきた園芸植物には、視覚的な美しさと共に、素晴らしい香りをもつ草花が多くあります。そしてヒトと植物の触れ合いの原点は、視覚や嗅覚や、触れてやさしい触覚などの五感と共にあったものと思います。次世代のヒトにとって有用な芳香植物は、香りの成分分析やアロマコロジー研究を踏まえた育種研究はもとより、より総合的な五感研究から生まれてくるものと期待します。

パフューマリー・ケミスト 蓬田勝之